@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:02000023, author = {伊藤, 美幸}, journal = {日本研究, NIHON KENKYŪ}, month = {Sep}, note = {渡辺幽香《幼児図》は明治26年(1893)に世界コロンブス博覧会の婦人館で展示された油彩画である。太閤記物に登場する猛将福島正則の幼時の逸話に基づき、石臼を引きずる幼児の姿が描かれている。また、幼児が素手で捕まえる蜻蛉は中国を暗示する龍と結びつけることで、日清戦争前年の時局を想起させるものとなっている。先行研究において本作は日本近代洋画の流れのなかで捉えられてきた。また、本作が近世の太閤記物から連なる作品であることが提示されている。本稿では太閤記物の系譜のなかで《幼児図》を取り上げ、福島正則の幼時の逸話を題材とする画題の展開を検討し、近世から近代へといたる太閤記物の文化史的な受容の一端を明らかにする。  太閤記物が流行した19世紀後期において、福島正則の幼時の逸話に基づいた画題は読本や錦絵、切附本等で確認される。本文と挿絵の両面を検討した結果、『絵本太閤記』に描かれた石臼を引く幼児の姿が定型表現として定着しているだけではなく、幼児の才能発掘や人材育成の大切さを説く教訓として受容されていたことがわかる。また、近世期から加藤清正や福島正則は、豊臣秀吉と同じように立身出世の模範として受け取られていたが、明治以降の修身書では福島正則が立身出世を成し遂げた偉人として取り上げられる傾向が強まっている。したがって、《幼児図》の画題は、近世から連続する太閤記物の認識と明治の社会背景とが複合的に含まれていると考えられる。また、モチーフの表面的な事象よりも精神性を描き出そうとする幽香の高い画力によって、石臼を引く強健な幼児という具体的なイメージのなかに明治の人々が内在的に抱え込んでいた立身出世への期待や欲求が反映されていることを指摘できる。}, pages = {109--125}, title = {<研究論文>渡辺幽香《幼児図》にみる太閤記物の画題流布と展開}, volume = {67}, year = {2023} }