@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00000559, author = {西槇, 偉}, journal = {日本研究}, month = {Sep}, note = {本論文は、中国近代の知名な作家であり、かつ画家でもある豊子愷の小品「林先生」(一九三六)が夏目漱石の「クレイグ先生」(一九〇九)、および魯迅の「藤野先生」(一九二六)に影響を受けた可能性を検討したものである。, 一九三〇年代初頭の豊子愷は、『漱石全集』を愛読し、この時期の彼のエッセーには漱石の小品文の感化が色濃い。「林先生」は彼の日本留学時の音楽教師を記したポートレート文学で、留学先で教わった教師を描いた「クレイグ先生」や「藤野先生」と題材を同じくする。「林先生」の表現は絵画的であり、詩味も添えられ、音楽も素材に含まれるゆえ、芸術色豊かな小品といえる。「クレイグ先生」との共通点として、写実的な描写と主観的な表現を織り交ぜて人物を素描するテクニック、反復の多用、誇張によるユーモアに富む表現、詩情がこめられていることなどが挙げられる。「林先生」と「藤野先生」との間には、師との絆を示す「ノート」という主要モチーフが一致する。「藤野先生」には留学時の作者自身の境遇や心境の変化も書かれ、藤野先生のみに焦点を当てていないという違いもある。, 三作品の比較により、共通点や相違が浮かび上がり、興味深い。「林先生」と「藤野先生」はともに中国人留学生の目から日本人教師を描き、師弟間の情感の交流を大切にする儒教文化圏の教師像が表されている。「クレイグ先生」はその点でやや異なり、漱石はその金銭感覚に違和感を覚え、師弟の情を感じたのは別れを告げにいったときぐらいであった。それでも、漱石は隠者の風貌のあるクレイグ先生をユーモアたっぷりの筆致で描き、その業績を讃えている。一方、世間に背を向けた隠者、奇人という性格は、クレイグ先生と林先生の共通点でもある。, 様々な共通点や相違を踏まえ、三作品それぞれの特色を次のように指摘できよう。「クレイグ先生」はそのユーモア表現が全編を貫き、詩情も漂う作品といえる。「藤野先生」は理想的な教師像を描き上げるほか、文筆家として闘う作者の姿をも映し出しているのが特色である。「林先生」はほかの二作品に見られる特徴を生かしながら、絵画、音楽、詩を融合した芸術味が際立つ。}, pages = {47--66}, title = {響き合うテキスト(三)異国の師の面影 : 豊子愷の「林先生」と漱石の「クレイグ先生」、魯迅の「藤野先生」}, volume = {36}, year = {2007} }