@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00006243, author = {神戸, 航介}, journal = {日本研究, NIHON KENKYŪ}, month = {Mar}, note = {本稿は税収が豊かな国のことを指す「熟国」と、税収が不安定で統治が困難な国を意味する「亡国」の語に注目し、熟国・亡国概念の制度的構造について検討を加え、摂関期の地方支配のあり方の一端を明らかにすることを目指した。, 第1章では古記録の分析を中心に、熟国・亡国概念の財政上の役割を検討した。当該期には国ごとに一定の税物を割り当てて随時徴収する新たな財政制度が成立するが、律令制の原則である課丁把握は次第に形骸化し、税額とは直接関係なくなったため、実際にどの国にどれだけの額を負担させるのかを決定する現実的な基準が必要となり、風聞や先例による流動的な評価である熟国・亡国概念が財政制度と結びついた。国家財政は熟国からの貢納を基本的な財源とし、亡国に対しては優免措置をとることで一定の負担と受領による復興の完遂を図った。, 第2章では『北山抄』巻10・吏途指南を主な材料として、受領を通じた地方支配における熟国・亡国概念と、理想とされた地方支配のあり方を考察した。罷申儀では天皇に召された亡国に赴任する新任受領が任国の状況と復興の命を受ける。赴任した受領が税額の減免などを太政官に申請した場合には、色代や給復などの措置は原則として亡国に対してのみ許容された。さらに、受領功過定の前提となる公文勘会では、亡弊国においては公文勘済の早晩よりも復興の実績が優先された。亡国に対しては良吏を任用し、彼らの申請を通じて種々の減免を行うことによって復興を図ることこそが、受領を通じた全国支配の理想的なあり方とされた。, 第3章では具体的な一人の受領である源為憲の事例から、熟国・亡国概念の実際のあらわれ方と理想的地方支配との乖離について述べた。受領は亡国への赴任は望まず、自らの利益を求めて減税申請を行い、それによって不正な利益を得、それができる実入りの良い国を「熟国」と称した。熟国受領の私富は成功や有力貴族への奉仕として回収されたが、次第に権門による熟国の独占が進行し、本来的な地方支配のあり方とは乖離していった。, このように、熟国・亡国概念は摂関期の財政制度・地方支配にとって重要な役割を果たしていたが、これは社会状況の変化に対応しつつも全国均一な財政制度・地方支配としての体裁を成り立たせるために生み出されたものであり、この時代の転換の評価を考える上で重要な視点になり得る。}, pages = {7--31}, title = {熟国・亡国概念と摂関期の地方支配}, volume = {52}, year = {2016} }