@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00000690, author = {木村, 汎}, journal = {日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要}, month = {Feb}, note = {ロシア連邦を構成する八九の行政単位の一つであるカリーニングラード地方は、日本人にとり次の意味で無視しえない地域である。ソ連邦崩壊後リトアニアが独立国となったために、カリーニングラード地方は、ロシア本土から地理的に切り離された陸の孤島となった。モスクワの中央政府は、そのような境遇となった同地方に「経済特区」の地位を認めた。経済特区とは、関税・査証・為替通貨などにかんし優遇措置を与えることを通じて内外からの投資を惹きつけ、よって当該地域の経済活動を活性化しようとする工夫のことである。ソ連邦解体後の一九九一~九二年にかけて、ロシア連邦内には約十四ヶ所の「経済特区」が設立された。  他方、ロシア政府は、一九九六年一一月以来、日本から領土返還を要求されている北方領土で日ロ両国が「共同経済開発」を行うことを提案している。「共同経済開発」とは、ロシア側の解釈によれば、一種の「経済特区」。ロシアによる「共同経済開発」提案の諾否を決定するにあたり、日本側は、類似の「経済特区」構想が現実にはどのような運命を辿っているのか、研究する必要がある。そのような観点からカリーニングラードの経済特区研究を行った研究は、皆無である。  結論を先に述べれば、ロシアの「経済特区」構想は、現在スローガン倒れに終わった。そのアイディアはロシア連邦の一三ヶ所で失敗し、わずかにカリーニングラードで「自由関税地区」としてのささやかな形をとり生き長らえているにすぎない。なぜか?本ペーパーは、その理由の探求を試みる。文献の読破に加えて、現地調査の成果にもとづいている。  カリーニングラードの経済特区化がはかばかしく進んでいない訳は、ひとえにモスクワ中央政府の態度と政策にある。カリーニングラードの経済特区化が進むあまり、同地方が中央のコントロールの手を離れ、諸外国(特にドイツ)への傾斜を深め、経済的オートノミーばかりでなく政治的自治を拡大する。――このような事態の展開を、モスクワは、危惧する。そのような懸念の存在のために、モスクワはたんにリップサービスをおこなうのみで、現実にはカリーニングラードの経済特区化を援助するための具体的な手立てを何ら講じていない。法律も制定しなければ、奨励金もあたえようとしない。このような中央政府の非協力のゆえに、現在、カリーニングラードは、ロシア本土に比べさらに苦しい経済的困窮下にある。自由関税地区としてのわずかな優遇措置を悪用して、中古車、麻薬などの密輸、売春の中継地と化している。  近い将来、リトアニアとポーランドのEU加盟が確実視されている。これが実現すると、両国に囲まれたカリーニングラード地方とEUとのあいだの壁が現在以上に高くなり、同地方は数々の分野で甚大なる被害をこうむるだろう。そのような事態に直面し、モスクワは一体どのようなカリーニングラード政策をとるのか。要注意である。  わが国が、ロシア政府による「共同経済開発」案を受諾すべきか否かの問に対する答えは、ほとんど明白といえる。仮にまだ明白でないとの慎重な態度をとる者は、諾否を決定する前に、ロシア「経済特区」(特にカリーニングラード)の実情をまず正確に把握する必要がある。}, pages = {13--35}, title = {カリーニングラードと北方領土 : 相異点と類似点}, volume = {24}, year = {2002} }