@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00007057, author = {マスキオ, パオラ}, journal = {日本研究, NIHON KENKYŪ}, month = {Nov}, note = {『寓骨牌』(天明七[一七八七]年刊)は、その時期に江戸で大流行していた「めくりカルタ」(ポルトガル由来のトランプカードで行われるカードゲーム)を擬人化して登場させる山東京伝の黄表紙である。従来の研究では、珍しい題材の擬人者の一つとして挙げられてきたが、特に意義があるとはされてこなかった。しかし、当時の読者が持っていためくりカルタの知識を意識しながら本作を読むことで、その構成や娯楽性を理解することができる。, 本稿ではまず、めくりカルタの基礎知識や遊び方を紹介し、『寓骨牌』でそれぞれの札がどのように擬人化されているかを分析した。『寓骨牌』の擬人化の手法はゲームにおける役割を反映しているといえる。例えば、クラブ・スペード・ダイヤ・ハートに当たるハウ(青札)・イス(赤札)・オウル・コップの四種一~十二の計四十八枚のうち、最大の点数が付く青札の六は、姫君の六大御前として擬人化されている。実際のゲームで点数の高い札が狙われるように、『寓骨牌』の物語で六大御前はさまざまな登場人物に思いを寄せられる。, 次に、作品の趣向を考察した。「めくり」のルールを意識しながら物語を読んだ結果、登場人物の関係もゲームを反映していることがわかる。例えば、赤蔵がお七と桐三郎を追いかけている時に、鬼と幽霊が突然現れて難儀を救う場面は、ある遊戯者が赤札の七で青札の七を取ろうとしている様子に、ジョーカーのような役割を果たす鬼札や幽霊札が突然現れるゲームの様子に見立てられている。よって、『寓骨牌』は「カルタ見立て」の趣向を持っているといえる。, このような解釈によって、山東京伝の擬人物黄表紙における『寓骨牌』の位置付けを改めて考察することが必要になる。京伝が『御存商売物』(天明二年)で人気作者となってから素材を変えて同じパターンで天明期に執筆した擬人物黄表紙と比較して、『寓骨牌』では擬人化された札にお家騒動に見立てためくりの勝負を演じさせることで、「お家騒動の擬人物」の趣向をさらに複雑にし、凝りに凝った作品を生み出した。この後、寛政の改革以降の大衆化した京伝の黄表紙には、そのように細かく編まれた擬人物は見出されない。そのため、『寓骨牌』は京伝の擬人物黄表紙の到達点と見なせるのではないか。}, pages = {81--106}, title = {<研究論文>京伝の擬人物黄表紙の到達点 : カルタ見立ての『寓骨牌』をめぐって}, volume = {58}, year = {2018} }