@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00007060, author = {福江, 良純}, journal = {日本研究, NIHON KENKYŪ}, month = {Nov}, note = {近代日本彫刻の中で、橋本平八(1897-1935)ほど、異色性をもって語られる木彫作家も少ない。彼が日本美術院展で発表した代表作品は、神秘的でどこか謎めいており、今日においても色褪せない斬新性は話題と関心を集めている。本研究は、永らく橋本作品の解釈に影響を及ぼす論説の発端となった作品《裸形少年像》の実見調査を行い、橋本の再評価を可能にする環境を整えるものである。, 木彫の技能に長けていた橋本は、出品作それぞれに特異な技法的処置を施し、既存の木彫表現を超えた独創性を狙った。ただし彼の場合、確かな技能が却って発表作品を難解なものにしたことも事実である。その技法に関する橋本自身の説明は乏しく、独特の論法による彼の彫刻論も作品を一層謎めかせることになった。, これまでは、そうした謎めいたところが橋本の特質として括られる傾向にあったが、この見方は、作者橋本の人物像と作品が持つ構造との境界を曖昧にし、橋本作品の評論上に「精神性」というバイアスを形成することにもなった。本研究が取り上げる《裸形少年像》の、作品表面に残る特徴的な刃物痕と背面に裂開する大きな干割れの問題は、係るバイアスによって誤解のうちに注目された、制作技術と彫刻材料が織りなした作品上の様相と言える。, 筆者は、調査の過程で、橋本が採った技法処置と作品形態上の諸特徴が、かつてこの作品上に語られた「円筒形の形」、「求心的」、「木心」などの批評言説と相いれないことを確認していった。本研究は、新しく得られた調査内容を彫刻技法の原理と照合することで、橋本に纏わりついてきた評論上の定型文から彼を解放するとともに、《裸形少年像》に適用された特殊な手法や放置された干割れの意味を検証した。その結果、橋本は素材の物性を逆手に取ってその制約を克服し、そのことで「石彫木彫の区別」を超えた「彫刻」を目指したことが明らかになった。素材の物性事態に自律的価値を認め、方法論上に応用した橋本には、近代的オブジェにも通じるオリジナリティの覚醒が認められるべきである。こうした橋本の意思の前では、「木のアニミズム」などという霊性観念をもってされる傾向にあった従来の論説は、根本的な見直しが要求されるであろう。}, pages = {169--193}, title = {<研究論文>橋本平八《裸形少年像》と木材の克服 : 木彫と「木製の彫刻」を分ける眼差し}, volume = {58}, year = {2018} }