@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00007589, author = {李, 済滄}, journal = {日本研究, NIHON KENKYŪ}, month = {Nov}, note = {京都学派の東洋史学者として、谷川道雄(1925~2013)は内藤湖南からの学統を受け継いでいる。中国の歴史を時代区分論という方法で捉えた内藤は、紀元3~9 世紀の魏晋南北朝隋唐史を中世貴族制の時代と位置付け、世界の中国史研究に計り知れない影響を与えた「唐宋変革論」の礎としている。そして、この学説を深化させ、さらに発展させたのが谷川である。  谷川は、政治中心の正史記録の底に私欲の抑制や災害時の救済など、周辺の自営農民との連携を重視する地方豪族の動きを分析し、このような主体的に行動する豪族の道徳・人格の発揚が中核となる魏晋南北朝時代の地域社会を一種の共同体としてとらえ、その力がやがて隋唐帝国形成の原動力となっていくと主張する。 谷川「豪族共同体論」の独創性とは、「共同体」の中に階級関係もたえず存在する「階級共同体」としての特徴を明らかにしたことである。「階級」を「共同体」存続の基軸として、両者の相互関係を新たに構築しており、両者を分断してとらえる従来の考え方に対して全く逆の構想である。  大正・昭和・平成を生き、敗戦から戦後の高度成長を経験していた谷川は、研究者の生きる現実の世界と、研究対象となる歴史の世界との結合により、いかなる歴史像が作り上げられ、その歴史像の持つ現代的意味とは何かを常に追い続けていた。そのまなざしは、個人としての等身大の世界が得られない戦後日本民主主義の限界にも向けられ、それを結局のところ「人間主体」の未完結という問題に集約させたのである。このような「人間存在の内部」に関わる深刻な問題に対して、解決の糸口をつかむために、人間の根元的な存在形態であった「共同体」に注目したわけである。本稿では、谷川の中国史研究に見られる現代日本への思いも詳しく検証した。  中国から日本へ、東アジアから世界へ、歴史から未来へという壮大な思惟構造を持った谷川史学の本質は、人と人との連帯を重視する人間存在の様式を中国史上に再発見して、そこに一種の普遍性を賦与しようとした点にある。本稿は、このような戦後日本の社会思想史の分野に生まれ、そして日中両国の未来を照らした谷川史学の醍醐味を吟味しつつ分析を加えてみた。}, pages = {105--135}, title = {<研究論文>谷川道雄を読む : 共同体論、人間主体、そして日中の未来}, volume = {61}, year = {2020} }