@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00007835, author = {平田, 光彦}, journal = {日本研究, NIHON KENKYŪ}, month = {Mar}, note = {本研究は、仮名の「散らし書き」の二次元的構成を構図によって把握し、分析する方法を提示するものである。散らし書きは平安時代に生起した表現であり、各行の文字の書き出し(行頭)と書き終わり(行脚)の位置、行の長さ、行と行との間隔(行間)等に変化がつけられた書き振りのことである。  仮名の空間は、線や字形、線や文字の連続による流れ、墨量の変化、散らし書きなどの目に見える造形に加えて、流れの切断や行と行との関係などから生じる「間」や響きといった感覚的な所与などが、時間の推移を伴いながら相互に関連して構成されている。本研究の対象とする散らし書きは、仮名の美を構成するこれら諸要素のうち、空間の意匠性にもっとも関与するものである。  散らし書きによる空間の二次元的構成については鎌倉以降の書論や今日の解説書などに論じられてきた。それらの視点は、自然の景観を型によって教示したものや、散らし書きによって形成される行頭行脚のアウトラインを用いた形式的な分類、あるいは書写空間を図形によって提示する等の方法で実践の工夫へと結びつけようとするものであった。  本研究では、まずこれら従来の散らし書き論について、各論の要点を抽出して捉え直し、理論的な流れを把握した。続けて新しい散らし書きの理論として補助線を用いた構図法を提案し、実際の古筆を用いた分析をおこなった。研究の題材には、平安古筆を代表する散らし書きの名品である「寸松庵色紙」と「継色紙」、そして『古今和歌集』の完本として伝存し、冊子本の展開から意匠性に富んだ散らし書きが観察できる「元永本古今集」を選定した。補助線を用いた分析によって、紙面に潜在する行と行との関係や視線の流れが可視化され、空間の変化と統一を形成する具体的要因や、書き手が散らし書きにあたって感覚的に見定めていたものを客観的に推察することができた。従来の理論とは異なる視点から散らし書きの構成を読み解くこの構図法は、仮名表現の研究や創作、およびその教育や指導場面において有効に活用できるものであり、仮名の構図論に新たな地平をもたらすことが期待される。}, pages = {9--50}, title = {<研究論文>散らし書きの構図論}, volume = {64}, year = {2022} }