@article{oai:nichibun.repo.nii.ac.jp:00000825, author = {厳, 紹璗}, journal = {日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要}, month = {Jun}, note = {奈良時代の日本古代文学にきわめて重視すべき作品『浦島子伝』がある。その題材や文体などすべては中国唐代の「伝奇」にたいへん類似している。本稿ではこれを「漢文伝奇」と名付けた。『浦島子伝』と「浦島伝説」は二つの異なる発展段階の作品である。――「浦島伝説」は「伝奇」に先行する段階の作品であり、完全に民間のものであり、それに対して、『浦島子伝』は文人の創作の作品である。日中古代文学が神話や伝説から物語文学へと発展する過程には、「漢文伝奇」の創作を主な内容とした過渡期的段階がある。『浦島子伝』こそ「漢文伝奇」の代表的な作品である。  伝播の歴史が古いので、『浦島子伝』のテキスト間には多岐にわたる意義の相違が生じた。文化史学的立場から考察を加えるとすれば、それぞれ異なったテキストの間には、事実上前後する伝承関係がある。これらが示す伝承の発展こそ、伝記文学の日本化の過程である。本稿では『浦島子伝』のテキストを四つの系統に分けた。  『古事記』の「火遠理命神話」、『日本書紀』の「浦島伝説」、及び『萬葉集』にある「水江浦島子」という三つの神話と伝説が、この伝奇を構成した日本民族文化のルーツである。その中で、「水江浦島子」は日本先住民の「汎海洋崇拝」という心態を表し、「浦島伝説」は渡来人(帰化人)の「特定生物に対する崇拝」という心態を表しているのであるが、しかし、「火遠理命神話」には作品の創作に創造的な空間が加えられているのである。  また、文献学的に実証的な手段を取ると、この『浦島子伝』からそこに融合された東アジア文化(主に中国文化)の要素を引き出すことができるのである。本稿ではこれらの要素を「媒体」と名付けた。  この伝奇が媒体とした中国文化の要素には、主に四つの様式がある。Aは、秦漢から魏晉にかけての「神女文学チェーン」で、Bは、『遊仙窟』を始めとした唐代伝奇で、Cは、「神仙観念」と「亀崇拝」及び「情愛のリビドー」を融合した「蓬莱文化」、Dは、「丹石の煉」と「房中の術」をもって「不老不死」を目的とした道教理念である。  『浦島子伝』は、一方で日本民族の神話や伝説を継承しつつ、また、一方で東アジア文化と多く関連している。この特徴は、まさに日本物語文学形成における文化の豊かさ、及びそこに内在するメカニズムの複雑さを表しているのである。}, pages = {33--72}, title = {日本古「伝奇」『浦島子伝』の研究 : 日中文化における神話から小説への軌跡についての研究(その一)}, volume = {12}, year = {1995} }